愚問自答「給与の高い人の意見は正しいのか?」
いわゆるコンサルティング業界に身を置いて10年近く経ちます。
思いのほか長く続けられている理由の1つには「風通しの良さ」があります。
端的に言うと「(クライアントの課題解決において)ロジックが正しければ若手の意見も通る」という風土が根付いていて、結構楽しく仕事ができる、という点です。
(もちろん、上司やメンバーに恵まれてるからこそ、上記が成立するのですが)
かたや、世の中の会議を垣間見ると必ずしもロジックでは決まらない、謎の力学が働いているようです。
特に上役の人の意見が「俺/私の勘」で平気で通ることも少なくなく、若手がゲンナリしている姿を見ると、どうしたものかと思います。
ということで今回の愚問自答は「給与の高い人の意見は正しいのか?」を賞味しようと思います。
この問題、米国では「HiPPO」(The Highest Paid Person's Opinion)と呼ばれているようです。
※ヒポポタマス=カバにかけているところがなかなかニクいですね。
日本特有というわけでもなく、海外でも同様なようです。
この愚問については、以下の2つの観点で考えてみます。
1.HiPPOはなぜ通るのか?
2.HiPPOは正しいのか?
※会議で意見が通るのと、意見そのものが正しいかは別問題として扱います。
1.HiPPOはなぜ通るのか?
単純な構造としては、権限規定における決裁権限や、派閥による多数決パワーが考えられます。
あとは上役は人事権を有していることも少なくなく、生殺与奪を握られるとHiPPOを許容せざるを得ないという事情もありそうです。
また経済学的に考えると、HiPPOは時間あたりコストが高いため、あくまで会議内でのコストの無駄遣い回避としては、HiPPOが通るのもあり得る話です。
このように、内容の是非とは別にそもそもHiPPOは構造上、かなり通りやすい環境にあります。
2.HiPPOは正しいのか?
これはケースバイケースなので一概に言えませんが、個人的な経験則に基づくと、1〜2年くらいの短期視点ではHiPPOが当たっていることが多い気がします。
これの要因もシンプルで、1〜2年先くらいならこれまでHiPPOに基づいて推進された戦略・施策方針の範疇で事実が収まるからと考えます。
冷静に会議を観察していると、実はHiPPOでなくても、1〜2年先の意見は大抵当たっている(大外ししない)のですけどね。
このメカニズムは意外と大事で、1〜2年先の比較的高めの精度でHiPPOが通っていくと、「HiPPOは常に正しい(ことが多い)」という錯覚に陥ります。
つまり、「通っている」と「正しい」を混合するわけです。
では中期的な話はHiPPOではなく、若手〜中堅が正しいか?というと、これまたそうとも言えず、要は中期的な予測なんぞ誰にも当てられないという話です。
(10年くらい先ならある程度大胆な意見を張れば当てられますが、3〜5年は難しい…)
ちなみにコンサルティング業界がHiPPOに陥りにくい要因として、HiPPOのコストよりもクライアントからのプロジェクトフィーをかなり強く意識するからと思いました。
結論:
給与の高い人の意見は構造上"通りやすい"が"正しい"とは限らない。