愚問自答「なぜ職業プロとしてのキャリアアドバイザーになかなか出会えないのか?」
「きみたちはどう迷うか」(酒井穣著)という、キャリア開発に関する良書を読みました。
本書は主人公≒著者が若手の方のキャリア相談に対して、主人公自身も色々思案しつつ応える、という形式で構成されます。
とてもリアリティがあり、わかりやすいと思う一方で、
「現実にはこういったキャリアアドバイザーにはなかなか出会えないな」
「そもそもキャリアアドバイザーって仕事として成立するのか?」
とも思ったため、愚問自答します。
※僕自身、周囲の方にキャリアの相談をさせていただいてますが、決してアドバイスが役に立たんと言っているわけでなく、相談する場合は「先輩」「友人」と見ており、よく考えたら職業プロとしてのキャリアアドバイザーってなかなかいないかな…と思った次第なのです、ハイ。
-----
「キャリアアドバイザー」という言葉で想起するのは誰でしょうか?
1.人材紹介会社のコンサルタント
2.プロコーチ・メンター
3.人事部員
それぞれについて考えてみます。
1.人材紹介会社のコンサルタント
いわゆるキャリアに関するビジネスに携わっている方々。
その意味ではキャリアに関するプロではありますが、どちらかというと「ポジションマッチのプロ」という印象です。
僕自身、10年近くお付き合いいただいているコンサルタントの方がいて、信頼はしていますが、基本的な問題解決は「ポジションの紹介」を介すことになります。
よって、転職意向がないときの悩みをするのにはなかなか悩ましいです。
これは人材紹介業が基本的に仲介によって収益を得ることに拠ると思います。
(成功報酬型か否か、とか人事コンサル込み等、ちょっとした違いはありますが)
多分、コンサルタントの方は「転職に関係なくても全然ok」と仰ると思いますが、忙しいのに悪いな…と僕が遠慮してしまうのもあります。
キャリアのプロであるがゆえに、私的な相談がしづらい…という感じでしょうか。
(翻すと、相談者にそう思わせてしまうような無言のプレッシャーがこの業界にはある気がします…)
あと、これもやむを得ないのですが、優れたキャリアコンサルタントであるほど業種特化になるため、業種をまたいだ総合アドバイスが難しいかな…とも思いました。
担当業種が広い場合は今度はどうしても個別の業種への浅さが気になってしまいます。(これはどの仕事でもそうですが、広くて深い、はムリ)
2.プロコーチ・メンター
コーチやメンターの方に何度かお世話になっており、問題解決の効用は体感しています。
僕個人の実感として、コーチやメンターは今の自分の心の在り方を整えてくれることに有効と思います。
一方で、基本的な手法が内省やリフレクションに基づくため、中長期のキャリアを予測した上での"アドバイス"ではないなと思いました。
(そもそもそういう機能なので当然ですが)
3.人事部員
人事部員の方はその会社におけるキャリア開発支援のプロとも言えます。
そのため、転職しないという前提では非常に頼れますが、転職前提だと逆に相談しにくくなります、立場的に。
-----
ということで、それぞれの方がプロゆえに機能的な制限が生じるため、フラットかつ中長期的な視点でのキャリアアドバイスは難しいのだと思いました。
ちなみに、自分の会社以外に勤める人事の方は結構参考になる意見をくれます。
というのも、人事の方はキャリアで浮き沈みするサンプルを多くみているため、帰納法的に秀逸な洞察を得ているためです。
ただ、そう都合よく自分が働きたい業界の人事の方と出会えるとは限らないのが難しいところです。
あとこの場合、"仕事"ではないですよね。先輩・友人枠と同じになります。
同様にキャリアコンサルタントの方もプライベートで会うと参考になりますが、これまた"仕事"ではなくなりますね。
結論:
キャリアに関するプロはいるが、シチュエーション・機能により専門特化しているため、相談者に対して大局・総合的なアドバイスは困難。
結局は自分で考え、解決するしかない!