日々是、徒然に愚問自答

生来の小心者なのか、単に暇なのか、、、、日々悶々と悩みや疑問が浮かびます。しかしながらその大半は取るに足らないことで、人様の貴重なお知恵と時間を拝借するのもはばかれます。そのため、自ら産んだ愚問には自ら答えて始末をつけようという試みです。通勤電車等でご賞味くださいませ。

愚問小説「天職にいちばん近い島⑧悩まないためには?」

「それは良かったじゃない。顔つきも明るくなったと思うよ」

 

6月最初の日曜日、中野のカフェ。
向かいに座るケイコさんが嬉しそうに笑ってくれる。

 

昨日、クリニックの定期診察で先生に最近考えていること________________ 

心がモヤモヤしたら自分のおかれている状況を客観的に整理すると『自分が悪いわけではない』と思えてきて気持ちが軽くなること

を話してみたところ、先生から『快復してきているので7月から職場復帰できるよう準備していこう』ということを言われた。

 

そのことをケイコさんに伝えたら喜んでくれた________________という状況だ。

 

「ありがとうございます。
 僕がこうやって状況整理できるようになったのは、前にケイコさんがノートに書いてくれたことをマネしてみたからなんですよ」

「えー、そう言ってもらえると嬉しいな。
 でもそれはマナブくん自身の考える力がすごいからだと思うよ」

 

こうやって終始ニコニコと話ができることがとても幸せだ。
休職始めの4月、いつも心がドンヨリと曇っていた頃と比較すると全然違う。
あまり楽観視するのもよくないが、いまは休職前より精神的には元気で落ち着いている気がする。

 

ただし、快復して復職が見えてきたからこそ『復職後にまたストレスがたまったらどうしよう』という不安もある

 

ケイコさんに社会人の先輩としての意見を聞いてみる。

 

「ストレスね...。
   確かにわたしも投資銀行(証券会社)勤務だったときは、とんでもないストレスを抱えてたな...。
 ただ、わたしの場合は労働時間の長さと上司からのプレッシャーがストレスだったけど『いまの案件が終われば解放される』っていう感じだったな。
 だから強いけど原因が分かりやすくて過ぎ去るのも速いストレスだったと思う」

「強いけど原因が分かりやすくて過ぎ去るのも速い...。
 その整理の仕方、いいですね。
 そうしたら僕が感じていたのは、弱いけど原因が分からなくて長い期間で積もったストレスと言えそうです」

「マナブくんの話を聞くと、そうかもね。
 わたしが受けた強いストレスの場合、短期的には『我慢してやり過ごす』で対処するうちに慣れてくるんだけど、ある日『この仕事はオカシイ!』って思って辞めちゃう...って感じかな。よく辞めた同僚から『人間の生活を取り戻せたよ』ってメールきてたしね笑」

「それも壮絶ですね...。
 原因の分からないストレスの場合、短期的にはストレスと気付かないけど、ある日積もり積もった雪だるまのようなストレスに心と体が押し潰される...って言えそうだな。

 うーん、整理するとこんな感じかな......?」

 

そう言って僕はノートに書いてみる。
最近は思い付いたことを書き出せるよう、家でも外でもノートを手元においている。

 

 

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「どれどれ…。
 うん、そうだね。マナブくんが書いてくれたとおりだね」

 

ケイコさんがノートを覗こうとふいに顔を近づけてきたので、ちょっとドキッとした。

 

「あ、ありがとうございます…」

 

そんな僕の心境を知る由もなく、ケイコさんはノートの方を見て話し始める。

 

「わたしもカウンセラーの資格があるわけじゃないから専門的なことは分からないけど、多分わたしが居たようなプレッシャー系ストレスばかりの職場って珍しいと思うんだ。
 多くの人は雪だるま系のストレスを気付かないうちに溜めているんだと思うよ。
 だから雪だるま系の原因で書いている『相性・考え方の違いなど、人によって 受け止め方が違うもの』や、対応策で書いている『原因を特定して受け止め方を変える』っていうのはホント大事だよね」

「僕も今回、自分のこともあって色々考えてみたんですけど…...

 職場で『明らかな悪者』ってそう滅多に居ないんだけど、
 『合わない人』『違和感のあるコミュニケーション』っていうのは結構あって、
 でもそれを言い出しづらい雰囲気にあるから雪だるま式に積もり積もる……

 って思うんです。

 だから『自分の受け止め方を変えることでしか解決できない』とも言えるし、
 逆に、『受け止め方を変えるだけで、ゆっくり確実に雪解けができる』とも言える
 
んじゃないかな」

 

ここまで言って向かいのケイコさんを見ると、僕の方をジッとみている。

「マナブくん…」

 

僕はまたもやドキッとし、気恥ずかしくなった。

 

「すごくいいと思う!

 マナブくんは営業に自信がなかったって言ってたけど、いまみたいにじっくり丁寧に整理して相手に伝えれば、きっとお客さんに伝わると思うよ!」

「そ、そうですか…?!
 そんな風に考えてなかったけど…、そう言われると嬉しいですね…」

「前にメールで送った『ニーズ把握』と『論理的思考』がマナブくんの強みなのかもね。

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piropiro2000.hatenablog.com   

だから、マナブくんはその強みを営業で活かせばいいと思うし、事務職やコンサルとかも向いているかもね!」

 

突然そう言われて驚く。

 

「いや…そんなにすごいとは思わないですけど。。
 だってニーズ把握って言っても、いま書いた表も、自分の悩みを整理しただけでお客さんのニーズを聞いたわけじゃないし…」

自分の悩みを整理できるっていうには客観的な視点を持っているってことで、それはお客さんのニーズを正しく理解するときにも同じだと思うよ」

 

力強くケイコさんに励まされ(?)、そんなものかと思ってくる。

 

「何だか復職するのが不安じゃなくなってきた…というか、色々と試してみたくなりました!」

「マナブくんがそう思ってくれてよかった!」

 

そうなのだ。

多分、働く上でストレスをまったく感じないということは難しいだろう。
特に新しい環境に身を置いたときは誰しもストレスを感じるはずだ。

 

そういうときには、一度自分の置かれている状況を客観的に見て、

・ストレスのタイプを見分ける(プレッシャー か 雪だるま)

・それぞれの対応策をとる

ということをすれば、悩みは少なくなるはず。

少なくとも「ストレスへの対処が分からなくて悩む」という、深刻な状況はやわらぐと思う。

 

いまは僕自身が快復途中だけど、いつかこのことを誰かにアドバイスして、
悩める人を一人でも少なくできたらいいな

 

僕の中に初めて、仕事での『夢』『目標』の火が灯った気がした。