日々是、徒然に愚問自答

生来の小心者なのか、単に暇なのか、、、、日々悶々と悩みや疑問が浮かびます。しかしながらその大半は取るに足らないことで、人様の貴重なお知恵と時間を拝借するのもはばかれます。そのため、自ら産んだ愚問には自ら答えて始末をつけようという試みです。通勤電車等でご賞味くださいませ。

愚問自答「新卒で入社した会社でどのように働くべきか?」

4月1日です。

この時期はベテラン社会人にとっては「あー、また1年が始まるのね」くらいの感覚かもしれませんが、今日から社会人生活をスタートする方々にとっては、希望と不安が入り混じった複雑な心境かと思います。

 

僕も振り返れば2007年に社会人生活をスタートしており、干支が一周したわけですが、ものの見事に当初とは異なるキャリアを積んでおります。

そういうわけで1つの節目でもありますので、12年間を振り返り、「新卒で入社した会社でどのように働くべきか?」という愚問に自答したいと思います。

 

僕の社会人1年目というのは、今、当時の自分が目の前にいたら、スリッパで頭をたたきたいくらい生意気な若人でした。

頭でっかちで、「自分は他の人とは何かが違う」と、自尊心をこじらせているわりに、具体的にできることもなく、どーしよーもなかったと思います。

そのような僕でしたが、最初の会社(総合電機メーカー)で過ごした丸3年間は、のちの自分のキャリアにおいても大変貴重で、今でも生きている経験として以下があります。

 

1.基礎的な文章力

2.基礎的な社内調整力

3.小さなPDCA

 

順に追ってみましょう。

 

1.基礎的な文章力

厚顔無恥にも「愚問自答」という舐め腐った文書をサイバー空間に解き放っていますが、こう見えてメール文書等にはめちゃくちゃ細かいです。

様々な場面で社外の方にお会いする際によく、「メールではものすごく堅い方と思っていましたが、案外フランクなのですね」と言われます。

定型的な表現はほぼ使わず、

「このメールをみたとき、相手はどう思うか?」

「この言い回しは自分都合ではないか?」

「相手が快く思うためには他の表現がないか?」

ということを考えて、1つのメールを打つのに30分~60分ほどかける場合もあります。

特に「自分都合の言い回しではないか?」は相当気を配ってチェックします。

こう書くと「たかだかメール一本で…」と思われるかもしれません。また、人に何かをお願いするということは、ある程度自分都合になるのは仕方がないですが、個人的には「たかだかメールでも気を配れない人は、深層心理でも気が回らない」と思います。

もちろん、僕自身、全く聖人君主ではないですし、基本舐め腐った人生を送っているので無礼な態度になってしまうことも多々ありますが、「あ、これよくないな」と思ったら、「先ほどは厚かましいお願いをしてしまい大変申し訳ございません。」的なところからかみ砕くメールを再送したりします。

こういった所作が身についたのは、最初の会社が総務人事部門におり、「自分自身はプロフィットを生むわけではないので、できる限り丁寧に」という指導をかなり丁寧にしていただいたことによります。

実際、最初の1~2年間は社内メールでもオフィシャルに発信するものは上司の確認をしてもらい、朱入れしてもらったものを直して、また確認してもらって…という感じで、一見すると周りくどい行為でしたが、お陰様でその後10年以上経っても色あせないベーシックスキルを獲得できました。

なお、このメールでの所作は英語でも同じです。海外とやりとりするときに必要か?という話もありますが、古今東西、言葉遣いが丁寧な人間は信頼がおけるものです。

 

2.基礎的な社内調整力

 これも大事なスキルです。

特に若い頃は自分一人でできることも少ないため、周りの方々の力を借りつつ、推進することが必要です。

個人的には必要以上の根回しは時間の無駄と思いますが、独断も危ういと思います。

少なくとも「定型的にこうしておけばよい」という方式がないことを身をもって体験することが大事です。

例えば社内には「気難しい専門人材」という方がたまにいます。知見が高くてその道の第一人者だけど、人柄に癖があり、ちょっと面倒…。

そういう人に対して「何かしら考えのあってのことだろう」と思うか「あの人は変人だから…」と思うかでは、最終的なアウトプットが異なります。

僕は当時の上司が「社内の変人にやたら頼りにされる人」だったので、隣にいながら「なるほどこういうコミュニケーションをとるのね」と身近で学ばせていただきました。

コツとしては「話を聞く」に限るのですが、冒頭でこちらが「皆があなたに一目置いています。あなたからすれば愚にもつかないことをしているかもしれないけど、そうおっしゃらずに知恵を貸していただけると大変助かります」という雰囲気を醸し出すことが大事です。

実際、そういった方の言葉は背景までしっかり聞くと「なるほど、その可能性まで考えていて、会議でそういう発言だったのか」と思うことも多々あり、これはのちにコンサルタントになった際に非常に有益でした。

 

3.小さなPDCA

 僕は「好奇心こそ全て」という信条で働いているのですが、自分の好奇心だけでは事業のアウトプットにつながらないため、何かしら咀嚼する必要がありました。

単純にいえば、「自分が気づいた違和感・特異点」を「事業遂行において解決すべき課題」に整理し、その「解決方法を具体化して自分で実行できること」が大事です。

これができないと単なる社内評論家になってしまいます。

社会人の初頭で採用を担当していましたが、単純に「なんでこの職種は学生さんの応募が少ないのかしら?」という疑問を抱いたならば、過去10年分の採用実績を見直したり、他の職種と比較したりして、最初の疑問を「仮説」までかみ砕きました。

その仮説の上に立ち「おそらくこうすればよかろう」という解決策を小さなものでいいのでトライすると、効果が出てくるので、改めてどうすればよいのか考える…ということをしていました。

僕は結構「過去の経緯を振り返る」という行為が好きで、当時社会人2年目で、誰に指示されたわけでもないけど10年分を振り返ったという仕事の進め方は、今研究員という仕事をする上での基盤となっています。

ちなみに僕の専門は日本の製造業のケイパビリティという、よくわからないテーマなのですが、一応、明治時代から日本の産業を振り返ったりしています。さすがにここまでのタイムスパンで振り返る人は多くないらしく、興味のある方とは非常に有意義な会話になります(興味のない方はあまり反応されませんが、それも人ぞれですので…)。

あとは小さくてもPDCAを回すことは非常に大事です。自分がバリューチェーンのどの機能を担当するにしても「仮説に基づいて自分でひと回しした」という経験はとても重要で、深みが異なります。

 

結論:夢と希望と少しの不安にある若人の方々も、あまり堅苦しく考えすぎず、かといって舐めすぎず、「文章」「調整」「小さなPDCA」を心がけると、少なくとも12年間くらいは社会人をできますので、何かの参考になれば幸いです。