愚問自答「若くして活躍したいか?」
「な、なんだ…?!この、絵に描いたような野望青年は…」
数年前のある秋の夜、都内のコーヒー店で一人の若者を目の前にして、ナイスミドルは愕然としていた…。
------------------------
というわけで、何となく小説みたいな出だしにしてみました。
僕が何に愕然としたかは後ほど。
先日、日経ビジネスの久恒先生の「遅咲きキャリア」の記事を読み、いいね!と思いました。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/110500073/
たまに就活生や若手と話すと、成長への貪欲さに頼もしく思いつつも、ナイスミドルとしては
「そんなに焦らなくても良いのだぞ」
と、マチュアな眼差しを向けたりします。
とはいえ、僕も昔は何かに焦っていた記憶があります。テレビで若いスポーツ選手やタレントさんが才能を爆発させている様子を見て羨ましがっていました。
その後、ナイスミドルになると、そういった気持も何故だか自然となくなりました。
そんなわけで「若くして活躍したいか?」を愚問自答してみます。
------------------------
「若くして活躍したいか?」という短い文節ですが、これを2つに分けてみます。
1.活躍したいか?
2.若いときがいいか?
【1.活躍したいか?】
大いなる問題は「活躍って何じゃい?」ということです。
色々な人の話を聞くと、実に多種多様です。
・周囲の役に立ちたい
・世の中に足跡を残したい
・上司に褒められたい/評価されたい
・バリっとカッコよく肩で風を切りたい
・海外を飛び回りたい
・自分の出した商品を多くの人に利用してもらいたい
・周囲から羨望されたい
・お金をたくさんもらいたい
・出世したい
・大勢の前でプレゼンしたい
・私の履歴書に取り上げられたい
などなど…。
なんとなく世の中の風潮的には利他的な志が好まれ、利己的な欲望は疎まれる気もしますが、個人的には
「他人に迷惑さえかけなければ好きなことを目指せば良い」
と思います。
(往々にして利己的な人は他人に迷惑かけちゃうのが困りものなのですが…)
『活躍』という字をよく見ると、『活き活き』と『躍る(おどる)』で構成されています。
つまり、究極的には
「よぉーし、やるぞ〜。頑張っちゃうもんねー!!」
と心が活き活きと踊り回る、テンション爆発みたいな状態であれば、他人からどう思われようが、それは『活躍』と言えるのではないでしょうか。
ただ、恐らく『活躍』を渇望する人にとっては内面的な充足感というよりも、講演・記事などメディア的で取り上げられる、つまり『認知・承認』されることが活躍という気もします。
このような考えは究極的には好き・嫌いの話のため答えはありませんが、僕が見聞きする範囲の活躍する人 というのは、
『自分自身が前向きに楽しみながら、何らかの”タグ”がついて、世の中で認知・承認されている人』
という傾向にあるため、本稿ではそのように定義しておきます。
【2.若いときがいいか?】
直感的には若いときから心が満たされるのであればそれで良いような気もします。
「若いときの苦労は買ってでもしろ」という言葉もありますが、僕的にはむしろ誰か買ってくれるものなら売りたい、むしろタダでいいのでお譲りします。
というわけで別段若いときに苦労する必要もないと思いますが、美味しいオカズを先に食べるのも僕的な好みではないです。
先ほど活躍の定義で”タグ”という言葉を使いました。
”タグ”の概念はヘッドハンティングや起業でも共通しており、要は「自分を売り込むキーワード」です。「○○といえばこの人」みたいなものや、「私は○○が得意です」みたいな感じですね。
この”タグ”というのは一度できると非常に便利なのですが(転職や営業がしやすい)、逆をいえば、「一度できると外れにくい」という困ったこともあります。
ここで思うのが、「若いうちにタグを付けてしまっていいものか?」ということです。
タグが付くと、そのタグに準じた仕事が入ってきます。するとその分野での経験が蓄積され、ますますそのタグが洗練される…というタグ磨きには非常にいいサイクルが回ります。
一方で若いうちに特定分野での経験に偏ると後々大変ではないか?とも思うのです。
僕の場合、昔から「飽きっぽい性格」ということを自覚していましたので、最初から何かのタグが付くことを避けていた気もします。
※余談ですが、若いうち(20代中盤頃)に事業会社からコンサルティング会社に転職するのは、いわば「タグの付け替え」になるので、個人的にはありだと思います(僕もそうしました)。
あとは、若いときは「既定のタグを付ける」ということになりやすいかと思います。
これが年を重ねると「タグそのものを作る」ということもできるわけです。
僕は「愚問自答家」ですが、最初から名乗っていたわけではなく、30半ばになったあるとき、
「そういえば、自分は愚にもつかないことで悩んでいる。こんなことを人様に相談しても呆れられるだけだから自分で始末をつけよう」
ということで「愚問自答家」というコンセプトを思いついたわけです。
これ、仕事と全く関係ないです。
(ちなみに僕自身、仕事では何のタグなのかさっぱりわかりません…)
そういうわけで個人的な見解として
「若いうちでも良いけど、熟成されてからの方が味わい深いよ」
と思ったりします。
------------------------
ちなみに冒頭のエピソードは、数年前に就活生の相談に乗っていたときの話。
青年「早くから活躍したいです」
僕「そうですか。どんな感じになりたいのですか?」
青年「うーん。20代で一本はもらいたいですね」
※一本=年収1000万円という意味
僕「そ、そうですか。すると金融か商社かコンサルですかね…」
という一幕でした。
こういう若者って今でもいるのだなぁ〜と、シーラカンスに出会ったような気分になりました。
結論:マチュアになってから心躍る方が幸せな気がしませんか?